2013年8月18日日曜日

サウジの結婚式@ハーフルバートン

今まで3度サウジアラビアの結婚式・披露宴に参加した。
第一回目はクウェート国境の内陸都市ハーフルバートン(Hafar Al Batin)にて、二回目は東部州に有るサウジで一番大きなシーア派都市カティーフ (Qatif)にて、三回目は一回目と同じくハーフルバートンにて。ハーフルバートンはサウジ人のほとんどがスンニ派。

結婚式・披露宴は、日本の結婚式を思い浮かべても分かるように、地域・家系・個人によって非常に内容が異なるものだから、「サウジの結婚式」などと一括りにはできないけれども、まあ日本とサウジで比較したら全く異なる点もあるわけで、飽くまで一例にすぎないとはいえ日本の人から見たら興味深いこともあると思う。

ところで、僕が参加した限りでは、結婚式と披露宴の区別は無い。キリスト教なら式として教会で愛の誓いやキスなんかもしちゃうのだろうけど、イスラム教のモスクで男女が肩を並べてなにかをする、ましてや家族以外に嫁の顔を見せたり人前でキスなんてことをするはずもなく、結婚そのものは書類上の契約であって、式=披露宴ということになる。
というわけで、「結婚式・披露宴」と書くのが面倒なので、日本で言えば披露宴の要素が強いものの、以後「結婚式」と書くことにする。

今回は、一回目と三回目のハーフルバートンでの結婚式の模様をまとめてみる。
この二件の内容は、違う家族だけど同じ部族名の人たちのもので経済階層も近いので、非常に似通っている。
参加者もかぶりまくりで、三回目の方では一回目に参加した僕を覚えててくれた人達もいた。

まず最初に明記しておくけれども、以降には一切女性の話は出てこない。新婦も当然式には参加していて、女性出席者も大勢いいる”らしい”のだが、会場の入口から違うので集っている様子も会場内での様子も全くわからない。だから、僕が見たのは男性側会場でのことだけだ。

(以下、一回目に該当するものを(1)、三回目に該当するものを(3)と表記)

全体のスケジュールは、大体(1)も(3)も同じで、次のような感じ。

18:00過ぎ 三々五々人が集まり始める。
       アラビックコーヒー、デーツ、紅茶、お菓子、お香、が振る舞われる。
20:00過ぎ  新郎登場
22:00頃     夕食が振る舞われる。
       新郎が退場。
       ダンスなどをする
24:00頃     解散


会場の様子(1):200人座れるくらいのスペースは有る



会場の様子、外と中(3):規模は(1)と同じくらい
正面には直近3代の王様の肖像が飾られている

まず会場到着時、これは結婚式に限らずサウジ人の家に招かれた時なども同じだが、その場に着いたら基本的に先に着いている参列者全員に挨拶する。入り口の右手から反時計回りに(イスラムは何でも右側からだ)。先に着いていた人達は、新しい人が来たら立って挨拶する。
挨拶がどんなもんかというと、「アッサーラムアレイクム(こんにちは)、エイシュアフバーラク(おかわりなく?)、ケイフハールク(ごきげんいかが)、ケイフアルアーエラ(家族は元気?)、ケイフなんとかかんとか」と、相手の様子を尋ねるワードを沢山掛け合い、握手とキス(頬を付け合う)をする様なもの。キスは、基本的に初対面の人とはしない。親しさに応じて長くなり、非常に親しければ頬同士を3回くらい合わせた後、鼻と鼻を合わせたりする。当然、男同士だ。
新郎の父は最初からこの会場にいて、参列者全員に挨拶をする。


配られるデーツ(3):皿にはごまペーストとヨーグルトクリーム的なものが入っている

振る舞われる軽食は、内容も順番も結婚式に限らずいつも決まっている。まずアラビックコーヒー、次にデーツ(ナツメヤシ)、次に紅茶と茶菓子。
必ずこの順番であり、個人宅での場合、コーヒーを給仕する人はその客人がもういいと言うまでその客の前に居続けて給仕し続けるので、コーヒーに満足したら「バス(enough)」と言ってコーヒーカップを振って給仕者に手渡し、満足した旨を伝えなければならない。飲みかけでキープしてはいけない。だからアラビックコーヒーカップはとても小さいのだ(写真貼ろうと思ったけど持ってなかった)。紅茶はキープしてOK。

なお、コーヒーカップも紅茶のグラスも基本的に使いまわすので、必然的にその辺のオッサン達と間接キスをすることになるが、細かいことは考えないのが吉。

お香が振る舞われるというのはどういう事かといえば、香木を焚いた香台を客の前に差し出して、客がその香りを楽しんだり、シュマーク(サウジ人がかぶってる布)で香台を覆うようにして香りをシュマークに移したりすること。…これも写真がないな。


新郎と(1)


新郎と(3)

新郎の登場だが、日本とは違って特に音楽が掛かることもなく、すれ違う客達と握手しながら会場正面奥の玉座っぽいところまで静かに歩いてくる。
で、玉座に着いても座る暇なんかなくて、すぐに押し寄せる参列者たちとの握手会開催状態になる。
まあこの辺は日本の披露宴の歓談時間と似た感じ。


挨拶する新郎(3)

新郎が白い民族衣装(トーブ(thoub))の上に纏っているマントはベシュト(Besht)と言う、特別な時に着るもの。別に新郎だけが着るものではなくて、新郎の父も着ているし、少数ながら客の中にも着ている人はいる。どうも、自分を特別に見せたい人は着るようだ。若い人はまずもっておらず、珍しいのか人のベシュトを着て記念写真を撮る若い参列者が沢山いた。



会の終盤、新郎の父が着ていたベシュトを着て記念写真を撮る参列者(3)


ベシュトを着てみたが、トーブじゃないとしっくりこない(3)

挨拶が一段落して、ダイニングに食事が用意されたら、みんなで移動して食事をする。
振る舞われるのはもちろん、サウジの伝統家庭料理カプサ。基本的にはご飯の上に肉を乗せた料理。
肉はチキンやさかなやひつじやラクダ。肉を煮込んだ出汁で米を炊いたり、普通の白飯の上に焼いた肉を置いたり、いろいろバリエーションが有る。
ほぼ炭水化物とタンパク質と脂質という感じの内容であり、健康には悪いと思うが、味はうまい。僕は好きだ。
もちろん、右手で食べる。


カプサ(別の時のもの)


ダイニングの様子(3)

ダイニングは歓談会場よりも狭いので、ここに参列者が集まるとそのおっさん密度たるや日本よこれがホモソーシャルだ!という状態になって圧巻だ。



食事の後は付属の洗面台で手を洗う(3)

食事後(3):サウジでは飯を余らせまくる。この食材的余裕と大皿をシェアするスタイルゆえ、招待客の数を確定しなくていいというシステムなのだ。


参列者はいつ来ていつ帰ってもいいので、全ての参列者が食事までいるわけではないけど、食事後は帰る人が多くなる。そうだよね。みんな飯食いたいよね。
食事を取って一息ついたら、新郎は退場する。新郎は新婦会場に顔を出し(女性参列者はこの時だけアバヤ(全身を隠す黒い民族衣装)を着る)、その後新婦を連れて家なりホテルなりに帰り、初夜を迎える。

そしてここから、結婚祝いのダンスなどを行う。主役に捧げるわけではないんだな。

まずは、サウジ北部に伝わる伝統的な踊りダッハ(Dahha)。最初に詩吟みたいな節を付けた歌を歌い、手拍子を叩きながら「んっふむっふ」と唸るもので、踊りというか手拍子。Youtubeを見ると、もっと激しい動きと掛け声だったり剣を振り回したりする動画もあるので、地方と部族によって違うのだと思う。
このダッハは、預言者ムハンマド(SAAS)が生まれるよりもずっと昔、ペルシアが象部隊を先鋒にアラビア半島に攻めこんできた時に、人数も少なく大した武装もないこの地域のアラブ人達が、騒がしく奇妙な音を立てることで象を脅かしてペルシア軍を混乱させて撃退したことに由来するという。参列者の一人のおっさんがそう言ってた。
アラブニュースの記事ではペルシアとは書いておらず「敵対部族の大部隊が攻めてきたが、少勢でまともに戦えないので、ライオンの唸り声をマネて、ラクダを叩いて走らせ、敵部隊を脅かして退却させた」とある。
http://www.arabnews.com/node/402627
いずれにせよ、戦闘由来と言われている。
ただ、伝統的なものにはつきものだが、ダサくて面白くもなくノれるものでもないので、若い人はあまりやらないしやり方もわからないとか。



ダッハの様子(1)


ダッハの様子(3):まず詩吟


ダッハの様子(3):次にんっふむっふ


ダッハの様子(3):参戦


続いては、ダブカ(Dabka)と呼ばれるダンス。これは元々はヨルダンやシリアの踊りらしいが、サウジでもポピュラーとのこと。基本的には6拍子の間に二回ステップ→足を踏み鳴らすという動きを繰り返す単調で地味なラインダンス。ただ、最後のタップだけ合わせればそこまでの動きは自由ということで、アレンジを加えて派手に踊る人もいる。
演奏家を呼んで生演奏で踊る所もあるし、音源を流して踊ったり、バックでマイクパフォーマンス(参列者イジリ)をしてる場合もある。


ダブカの様子(1)


ダブカの様子(3)地味にステップを踏む


ダブカの様子(3)派手にステップを踏む参列者の後ろで地味にステップを踏む僕


マイクパフォーマンス中(3)

参列者が思い思いにラインを編成し、疲れたら後ろに退いたりまた参加したりしながら、ラインが作られなくなったらだいたいそこで結婚式は終了。

既に書いた通り入出場は自由で、正式な招待などもなく、式次第も無い。日本の結婚式・披露宴と比べると非常に緩い進行であり、とてもサウジらしい。僕のような”外の人”でも参加可能だ。当然ながら全く知らない人の会にアポ無しで混ざるようなことはおすすめしないが。

なんというか、最後の踊りと規模の大きさを除けば全体的に歓迎の形式は個人宅で客をもてなすのと同じであって、サウジ人の目から見れば特別なことはあまりないと思う。規模が大きいので準備は大変らしいが、僕はこれをかなりの程度日常の延長だと思った。男性は着ている服もいつもと一緒だしね。新郎本人とその親以外の参列者にとっては日常+αくらいの空間。日本のとてもハレハレした空間とはだいぶ違う。

一方、女性の方は普段あまり弾ける機会がない分楽しみにしている人が多いらしく、サウジ人男性の参列者は妻のドレスを新調したり当日朝から女性家族の美容院への送迎をしたりと忙しいらしい。男性が歓談している時間にも、女性会場からはずっとダンスミュージックが流れていて、ひたすら踊っているようだった(想像)。
サウジのショッピングモールでは、いつこんなの着るんだ?というような派手で露出度の高い女性用ドレスがたくさん売られているが、こういう時に着るわけだ。


注記1:「炎上しそう」との指摘があった一部分を削除しました

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